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幼年連祷その2にしようかと思ったけど、
先にこっちからやることにした。
この2つの作品に対する作者本人からの「背景の説明」についてまとめよう。

吉原は全詩を出したとき、「自作の背景」という解説?を2つ書いている。
解説にクエスチョンマークをつけたのは、
本人が「嘘の上塗りかもしれない」という警告をつけているためで、
(もしかしたらそれは、深読みや浅読みをして
作者を苛立たせる読者への配慮だったのかもしれない)
全てが真実であると鵜呑みにすることは出来ないものの、
彼女の生活の背後の理解は詩の理解に役立つと思うので見ていきたい。

さて、幼年時代や初めて詩を書いた時期などももちろん重要なのだが、
それは別の場所で一度まとめたので、いつかそれを転載しようと思う。
今回扱いたいのは、幼年連祷と夏の墓という詩集におさめられた詩が
いったいどのような状況下で書かれたのか、ということである。

作者は幼年連祷の1~3章に対し、それを書いた理由(動機)を3つあげている。

・1
〈父の死後、終わってしまった"父と母と自分の世界"を無意識に手繰り寄せようとした〉
〈母を"追い越した"、つまり母に保護されてゐた立場から保護すべき立場に転じた自覚から、自分の幼年に、書くことによって別れを告げる必要を感じた〉

・2
〈「子供であったこと」にこだわってゐる自分を発見した〉
〈私はいつの間にか、数年がかりで私の幼時を再体験(再体験に対し作者ルビ)してゐた。そうしながら眺めてみると、それは実在の記録より以上に親しみ深く、生き生きと、〈本当の幼年〉として私の眼に映ったのだった。〉
(エッセイ「私の中の幼年」より)

・3
(自身とAという恋人との関係の中で)<そのためか、同時に私の中に、「おとな」に対する嫌悪といづれは自分さうなるといふ絶望が、言いかへれば失はれた幼年に対する愛惜がひとつのかたちをとり……>
(エッセイ「詩と愛」より)

また、「純粋病」という造語に対する説明を以下のようにつけている。

<"純粋病"といふ言葉は、Sがまず、アヌイの戯曲に登場する主人公たちに名付けたものであった。信じてもゐないのに儀式にこだはって死を選ぶ頑固なアンチゴーヌ、嫉妬の衝動に耐へきれずにふり向いてしまうオルフェ、ただ一瞬抱擁の手がゆるんだために恋人を許せないジャネット>

幼年連祷の1~3章と、夏の墓の後半を占める「むかしの夏」の部分は、ほぼ同時平行して書かれた。
この時期は、作者とA(最初の婚約者)との問題(あまりにもお互いに傷つきやすかったために、お互いに傷つくことしかできなくなり、婚約を双方によって破棄された)があった。
また、その後であったBとの結婚、息子Jの出産、そして離婚(母からの結婚へのプレッシャー、Aへのあてつけ、Bに母性本能を刺激されたことを結婚の理由としてあげている。また、離婚のほうは、Bの些細な嘘が許せなかったことと、Bが作者とAとの間に肉体関係がなかったことを信じなかったことなどをあげている)もあった。

この後、夏の墓の前半にあたる「ひとつの夏」の部分が書かれる。
夏の墓の詩の時系列が前後しているのは、作者本人が周囲に気づかれたくなかったために、不在証明(作者ルビ:アリバイ)をつくろうとしたからだという。

「ひとつの夏」は、Bとの決別直後に生じたXとの出会い(正確にはXとは出会っていたものの、恋をしたのそはそのときだった)があり、その過程を詩にしたものである。
Xは自由な人で、それゆえに愛の存在を信じなかったし、それと関わりあってはいけないと思っていた(恋愛は夢で終わっても、結婚まで行けば現実と直面しなければならぬように、自由でいるには愛があってはならなかったため)。
作者が嘘アレルギーであるならば、Xは「愛アレルギー」であり、愛を信じないということを主張するために、殆ど挑発的な形で、相手の愛を「ここまで出来るか」とつきつけることで試そうとする人だった。
その試験の中には当然のように裏切り(わかりやすく言えば嘘や浮気)も組みこまれており、Xが自殺未遂などを繰り返す中、最終的に作者はXから身を引くことになった(正確に言えばYという人物との出会いによって、泥沼から救われた)。

ここまでが幼年連祷、夏の墓までの彼女の背景である。
その後、Yという人物との関わりや、Xとの関係の傷跡(こっちがメイン)がオンディーヌに書かれることになる。

そして、Yとの関係が終わったあと、Zとの出会いが訪れる。
この時期は、詩集「昼顔」の時期と重なる。

Zと作者の関係は、Zにとって作者との出会いそのものが環境によって、精神的な裏切りになってしまっていたことは、誰にとっても不幸であった、とも彼女は言う。
そう、その出会いによって(他にも必然的な理由があってのことだが)<一人の人間がひっそりとこの世から消えた>という事件が起きてしまうのである。
しかし、それに対し、「責任は自分にある」とZは言った。「自分たちが」とは言わなかった。それが昼顔におさめられた「共犯」という詩の元となっている。


そんなわけで幼年連祷以降の、特に恋愛は複雑な人間関係の上で書かれているので、実は非常にわかりにくかったりする。
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